Accounting

<2023年3月期対策>自然関連のサステナビリティ開示

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

いよいよ、2023年3月期からの有価証券報告書において、サステナビリティ開示が義務化されます。中には、自然関連の開示を検討している企業もあるでしょう。

しかし、自然関連について開示しようにも、そうした事例が多くはありません。事例があっても「指標及び目標」がメイン。有価証券報告書に必須の「ガバナンス」と「リスク管理」については事例がないに等しいため、記載の仕方に悩んでいるかもしれません。

そうしたときには、今回のブログ記事が役立つと思います。というのも、TNFDの「ガバナンス」と「リスク管理」に関する開示事例を知っているからです。

気候変動よりも自然関連

有価証券報告書では、サステナビリティ情報を「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」という区分で開示することが求められています。この区分は、言わずと知れたTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候変動関連財務情報開示タスクフォース)の枠組み。

その意味で、今回の有価証券報告書におけるサステナビリティ情報は、気候変動への対応についての開示に主眼が置かれていたと考えることができます。もっとも、2023年3月期の有価証券報告書では、ISSBやSSBJによるサステナビリティ開示基準が確定していない段階であるため、気候変動のサステナビリティ開示をすべての企業に要求しないこととなりました。

個人的には、一定の日本企業では、気候変動よりも自然関連のほうが重要なサステナビリティ項目としていると推測しています。自然関連とは、自然環境や生物多様性などのこと。もちろん、全世界で気候変動対策が求められていることは十分に承知しています。それを否定するものではありません。そうではなく、自然崇拝や公害といった日本の土壌に照らすと、自然関連のほうが感覚的な納得感があるのではないかと考えているのです。また、対応も以前から進んでいますからね。

開示に活用すべきはTNFD

では、自然関連のサステナビリティ開示は、どのように行えばよいのか。これに関するフレームワークといえば、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)でしょう。TCFDとは2つ目の文字が「N」(Nature-related:自然関連)に置き換わっています。

このタスクフォースは、TCFDとは出自は異なるものの、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」という4つの柱で開示していく点は共通しています。TCFDの枠組みを踏襲したといったほうが正確ですね。ISSBによる基準開発においても、気候変動ではTCFDが取り込まれたように、自然関連ではこのTNFDが取り込まれるでしょう。

ならば、2023年3月期のサステナビリティ開示もこれに従えば良いかというと、それも難しいでしょう。実は、まだTNFDは開発中の段階。最終化は、今から5ヶ月後の、2023年9月に予定されています。そう、まだ開示フレームワークとして確定していない状況なのです。

ただし、ベータ版はすでに公表されています。そのため、これを活用する方法があります。実際、TNFDの開発に参画している企業は、正式版に向けて適用のテストを行っていますからね。2023年3月期の有価証券報告書におけるサステナビリティ開示に役立つこともあるでしょう。開示事例が極めて限られている点を除けば。

サステナビリティ開示の先進国

そこで、TNFD開示について、英国企業の状況を調べてみました。英国は、サステナビリティ開示の先進国ですからね。しかも、マニュアルレポートにTCFDの開示が義務化もされています。

2022年に決算を迎えた英国企業のマニュアルレポートを見ていくと、TCFDの開示の中ではあるものの、TNFDへの取組みに言及している事例があります。とはいえ、その数は少なく、また、一言二言触れている程度。さらに、触れているのは「指標及び目標」の箇所。日本企業で意欲的にTNFD開示している事例も、どちらかといえば、「指標及び目標」ですよね。

このような開示の状況のため、自然関連のサステナビリティ開示に関して、2023年3月期の有価証券報告書において必須の開示である「ガバナンス」と「リスク管理」の参考にすることが難しい。そう残念がっていたところ、見つけましたよ、TNFDの開示を行っている英国企業を。

TNFD開示の仮訳を紹介しています

この開示を行っていたのは、TNFDに参画していた企業でした。何ページにもわたるTCFD開示の後に、TNFD開示を1ページに収められています。しかも、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」という4つの柱で。

TCFDの開示とは別に、TNFDとして「ガバナンス」や「リスク管理」を開示している点で、極めて先進的な取組みといえます。そこで、この事例から「ガバナンス」と「リスク管理」を仮訳したものを、セミナー「【速報版!】2023年3月期の有報サステナビリティ開示の書き方講座」で紹介しました。

この開示事例があまり取り上げられていない中では、2023年3月期の有価証券報告書に自然関連のサステナビリティ開示を行うにあたって貴重な情報源になるでしょう。この仮訳スライドを入手するだけでもセミナーに参加する価値があると感じてもらえたなら嬉しいです。

自然関連の「ガバナンス」や「リスク管理」の開示に、また、その分量が手頃なボリュームの事例にご興味をお持ちのときには、一度、このセミナーの内容を説明したブログ記事をご覧ください。

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