企業のサステナビリティ開示は、もはや「良い会社に見せるための化粧」ではありませんよ。これは経営の中核を成す戦略的機能へと進化し、企業価値そのものを左右する重要な経営活動となっているのです。
日本においても、2027年3月期から有価証券報告書においてSSBJ基準に準拠したサステナビリティ情報開示が、また、2028年3月期からはその保証業務が順次義務化される予定ですからね。この制度変革により、企業は財務情報と同等の厳格性を要求される新たな開示環境に直面することになります。
しかし、多くの日本企業が抱える疑問は切実です。サステナビリティ保証業務とは具体的に何をするのか、保証手続の深度はどの程度なのか、そして最も重要な準備すべき事項は何なのか。これらの疑問に「なんとなくの答え」では、もはや済まされない時代が到来しているのです。
これらの課題に明確な解答を得るために、本稿では欧州CSRD(企業持続可能性報告指令)下で展開されているサステナビリティ保証の実態を詳細に分析します。特に世界4大監査法人による実際の保証報告書の比較検証を通じて、日本企業が直面する保証業務の全体像と戦略的対応の方向性を明らかにしていきましょう。
■分析設計の精緻化による洞察の最大化
分析の信頼性を確保するため、次の3つの統制条件を設定しました。第一に、制度的背景の差異を排除するため、オランダという単一法域に限定しました。第二に、グローバル監査法人の手法を網羅的に把握するため、PwC、KPMG、EY、Deloitteの4社すべてを対象としました。第三に、産業固有の影響を最小化するため、インフラセクターに業種を統一しました。これらの条件設定により、比較可能な分析基盤を構築したのです。
この条件の下で具体的な分析対象となったのは、次の4社です。いずれも2024年度を対象とし、かつ、国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務」に準拠したオランダ基準3810N「サステナビリティ報告に関する保証業務」に基づく限定的保証を受けています。