もし、テレビから「ギザギザハートの子守唄」が流れていた時代を知っているなら、この話は、たぶん他人事ではありません。
チェッカーズの楽曲、しかもシングル曲を中心に並べ替えたら、ひとつの物語が出来ていました。しかもそれは、恋が始まり、壊れ、そして人がいなくなる話。
最近、このブログはすっかりビジネスの話ばかりになっていました。構造、ロジック、フレームワーク。それらは嫌いじゃない。むしろ好きなほうです。
でもふと、「この頭の使い方、プライベートでも使えないだろうか」――そんなことを考えたのです。
思い出したのは、ずいぶん前に観た舞台でした。ユーミンソング・ミュージカル『ガールフレンズ』。セリフは一切ないのに、ユーミンの歌だけで、二人の女性の恋と友情が、はっきりと立ち上がっていた作品です。
その記憶が、ある夜、唐突によみがえりました。そして次の瞬間、胸の奥で小さな音がしました。
「これ、チェッカーズでもできるな」
チェッカーズのシングル曲を思い浮かべてみると、
恋が始まる歌。
舞い上がる歌。
嫉妬する歌。
別れる歌。
探し続ける歌。
――揃いすぎているのです。
まるで最初から、物語になるのを待っていたみたいに。
何より、チェッカーズは、10代から20代にかけて、浴びるように聴いた音楽でした。レコード棚の奥ではなく、いつも、すぐ手の届く場所にあった音楽です。
イントロが流れただけで、当時の空気が一気に戻ってきます。歌詞を確認する必要すらありません。頭の中では、曲ごとに、すでに「場面」が動いていました。
ただ、好きな曲を並べただけでは、物語にはなりません。そこだけは、仕事で嫌というほど学んできました。物語には流れが必要です。始まりがあり、転換があり、終わりがある。
だから、感情の高まりを頼りにしながら、曲を一曲ずつ置いては、入れ替えていきました。
「この次に、この感情は来ない」
「ここでこの曲が鳴ったら、話が壊れる」
そんなことを考えながら、何度も並びをやり直します。
不思議なことに、ある順番に並べた瞬間、それ以上、どこも動かせなくなりました。物語のほうが、「ここだ」と言っているようです。
ここから先は、懐かしさだけで読まないほうがいいかもしれません。曲名は、たいてい、思い出を連れてきますから。
こうして出来上がってしまったのが、次のセットリストです。
第一幕
- ギザギザハートの子守唄
- NANA
- Cherie
- あの娘とスキャンダル
第二幕・前半
- CLOSE YOUR EYES
- Love’91
- 素直にI’m Sorry
- 神様ヘルプ!
- 哀しくてジェラシー
- ジュリアに傷心
第二幕・後半
- I Love you, SAYONARA
- Room
- Blue Rain
- さよならをもう一度
- ブルー・パシフィック
- LADY-M.を探せ
第三幕
- ミセスマーメイド
- 星屑のステージ
- 俺たちのロカビリーナイト
- 涙のリクエスト
第一幕では、少しやんちゃな男が、女性に近づいていく。不器用で、強がっていて、それでも必死です。
第二幕・前半。恋は順調に見えます。けれど男は、その時間に慣れてしまう。気づかないうちに、彼女の視線は、別の場所を向き始めます。
第二幕・後半。別れは避けられず、男は彼女を失います。それでも、諦めきれない。街のどこかに、まだ彼女がいる気がして、探し続ける。
第三幕。再会が訪れます。けれど、もう同じ関係ではないことを男は思い知らされます。
あの頃は、こんな結末があるなんて、想像もしませんでした。
やがて彼女は、帰らぬ人になります。残るのは、歌だけ。あの頃、確かに鳴っていた音楽と、もう戻らない時間。
もし、あなたがこの順番で曲を聴いたら、どんな情景が浮かぶでしょうか。それはきっと、ボクの物語ではなく、あなた自身のどこかと重なる物語になるはずです。
この順番で聴いたことを、誰かに話したくなるかもしれません。でも、その相手は、同じ時代を生きた人がいい。
よかったら、一曲目から再生してみてください。物語は、もうそこに用意されているのですから。








