2019年3月19日に、金融庁サンは、上場企業の有価証券報告書の開示を充実させるために、「記述情報の開示に関する原則」を公表しました。昨日のブログでは、この原則のうち「重要な会計上の見積り」をピックアップして説明したとおり。この他にも4項目について開示の充実を進めています。
こうした内容がリリースされると、財務報告を作成されている方にとっては負担感を感じるかもしれません。確かに、今まで以上に深く記載する局面もあるでしょう。また、充実した開示のためには、社内の関係部署や担当役員と協議していく必要も出てきます。つまり、従来よりも作業工数がかかるということ。ここだけを見ると、負担感は否めません。
しかし、もう少し広い視点で見ると、状況は変わってきます。内部の作業だけではなく、有報が出た後の対応まで考えると、投資家やアナリストからの質問対応が減ることを通じてトータルとしての対応コストはむしろ下げられる可能性もあります。あるいは、投資家やアナリストが企業の基礎的な知識を得るための対話の時間を削除するだけでなく、それを踏まえてより発展した議論ができることによってプラスの効果も期待できるのです。
こうした効果は、社内の会議に当てはめて考えてみると分かりやすいでしょう。社内の会議では、情報の共有や報告がメインとなっているケースがあります。情報の共有であれば、しっかりとした書面が作れれば、「以上」とでいます。日本語が読めますので、それを閲覧することでわざわざ集まることなく、それで終わりにできます。そこであえて集まる必要があるとすれば、書面での説明が十分でないから。
先日のブログで紹介した勝間和代サンの最新刊『勝間式超コントロール思考』(アチーブメント出版)に、対面での打ち合わせの要否についての言及があります。非常に失礼ながらと前置きを起きながら、そうした打ち合わせを必要とするのは言語能力の不足にあると指摘しているのです。続けて、こう言い切ります。
対面で顔を合わせずとも、十分に情報の共有が言語あるいは図表などで行うことができるのであれば、わざわざ対面で会議をする必要はないのです。
このブログを読んでいる方なら、これを見てきっとウンウンと頷いているでしょう。ボクも大きく頷いたタイプ。言語や図表でしっかりと情報を伝えられるのであれば、それを書いた瞬間に、それを理解してもらうための対面での打ち合わせは不要になります。もちろん、それを踏まえてさらにその先に行くための議論には意義があります。しかし、それを理解するための時間は完全に不要。
このように会議が始まる前に、しっかりと言語や図表で表現した書類が展開されるなら、会議で集まった瞬間から、それを踏まえた発展的な議論ができるわけです。こうした言語化による効果は、財務報告でもまったく同じ。
今回、金融庁サンがリリースした開示に関する原則を踏まえているのであれば、投資家やアナリストとのやりとりを減らすことができます。言語や図表によってしっかり企業の状況を伝えることによって、対面で理解してもらうための時間がなくなるからです。そう考えると不安感ばかりというわけではありません。
ボクがサポートしたいのは、十分に理解してもらうための開示の仕方。不要なコミュニケーションに要する時間を削除し、かつ、より発展的な対話を促すための開示を行っていくのです。名づけて「ダイアログ・ディスクロージャー」。
そんな思いがあるものだから、今回の金融庁サンの開示の原則や好事例集についてセミナーをしたくて、したくて、しょうがない。決算が終わった頃に行ってみようかな。需要がありそうなら、本気で考えてみますね。