Accounting

投資家サイドの意見はこうだった

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

最近、このブログでは、有報の話が続いています。前半の部分の記述に経営者の考え方を反映すること。それを求める改正が続いているため、これを機会に全社一丸となって対応してはどうかと提案している次第。

昨日、財務諸表の作成サイドの方にそんな提案をしてみると、「確かにそうだけど、株価がいつ上がるだけしか興味がない投資家やアナリストもいるからね」との返答。自社のビジネスに理解をもってもらえるのなら、積極的に開示していくこともやぶさかでない。ところが、投機的な対象となることに抵抗があるといいます。

確かに、金儲け丸出しの姿勢で寄ってこられると、自社の経営に興味がないような印象も受けるのでしょう。あるいは、ビジネスはどうでもいいから儲けてくれと言われているように感じているのかもしれません。

それに関連して、鋭い指摘を発見しました。それは2019年3月16日付の、投資家フォーラムの第19回会合の報告書。

そもそもの前提として、上場企業の株式は市場で取引される金融商品だ。経営者は金融商品としての魅力、価値拡大策を市場全体へ向けて発信することが筋であり、企業の側が投資家の色分けをすることに賛成できない。

なるほど、上場企業なら、市場で資金を調達している以上、金融商品として存在している側面を忘れてはいけない。どんな投資家やアナリストであれば、説明を怠ってはいけないという主張も頷けます。

その一方で、同じく投資家フォーラムの第4回オープンセッションでは、ある投資家が、次のように話しています。

ビジネスモデルを開示していくとは、自分達が何者であるかを企業が自ら明らかにすることだ。これにより、そのような会社なら投資したいという投資家を引き寄せることができる。

さまざまな意図や期待をもった投資家がいるのは事実。上手く決算を説明できなければ、さまざまな投資家が寄ってくるのは統計的に明らか。その中を選り分けるとすると、企業サイドからの呼びかけに気をつかうほうが早い。

これは、ダイレクト・レスポンス・マーケティングと同じ考え方。セールスレターの文章は、販売先を特定しています。誰でもいいから買ってほしいとは考えていない。提供したい相手先を念頭に置いたうえで、文章の構成が決まり、また、言葉使いも決まる。もっといえば、「こういう方には適していません」とはっきり販売先を絞り込むケースすらあります。

こうしたセールスレターの考え方を用いるなら、決算説明で株をもってもらいたい相手を自ずと絞り込むことが期待できます。あからさまに「あなたに投資していらない」とは言わないまでも、自社の理念をしっかりと説明することで、賛同いただける方が集まる可能性が高まります。

人と人とは、基本的にわかり合えない。そう考えると、やるべきことは、対話を尽くすこと。まずは、そのように経営者のマインドが変わると、説明の仕方も変わるハズ。そこがクリアできているなら、次は有報の記述をより充実させていく。だって、あなたの会社は金融商品なんですからね。

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