Business model

落とし物の対応から垣間見る、ディズニーのビジネスモデル

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

ビジネスモデルが優れた会社は、ひとつひとつの要素が有機的に関連し合っています。ビジネスモデル・キャンバスに基づけば、ビジネスモデルには9つの要素がある。このどれもが有機的に関連しているほどに、ビジネスモデルは強いといえます。

 今日、ひょんなことから、ビジネスモデルの各要素が一気通貫しているのを目の当たりにしました。それは、娘の忘れ物から。

 娘が、ディズニーランドに行ったときに、ブレスレットを落としてしまいます。値段は安いものでしたが、彼女にとってはお気に入りのアイテム。心当たりを探しても、見つからない。

 そこで、遺失物センターに向かいます。残念ながら、ブレスレットの落とし物は届けられていない。詳細を伝えて、帰路につく。せっかくの楽しかった気分が少しだけ下がりながら。

 ところが。

 今日になって、家に郵便物が届きます。それも、娘の宛名で。そっと封を空けてみると、なんと、あのときに失くしたブレスレットが入っているのです。思わず「おお~」と家族でうなりましたよ。ただ、ボクが唸ったのは、ビジネスモデルが貫いている凄さ。

 ここで理解しておきたいのは、ビジネスの競争力を作る文化。これはアンバンドル理論として知られています。これをわかりやすく解説している書籍が、日本で著名なマーケッターである神田昌典サンによる『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHP研究所)。その文化とは、「経営の効率性」を重視するか、「顧客との親近感」を重視するか、あるいは、「商品やサービスの革新性」を重視するかの3つ。

 経営の効率性を求めると、標準化を達成していくビジネスモデルが適している。しかし、顧客との親近感を求めると、顧客に個別対応するビジネスモデルが適していく。よって、これらはバッティングしてしまう。

 また、商品やサービスの革新性を求めると、クリエイティブを目指していくビジネスモデルが適している。そのため、経営の効率性のために標準化を重視する文化とはバッティングしてしまい、一方、顧客との親近感のために顧客と寄り添う文化ともバッティングしてしまう。

 このように、どのようなビジネスモデルを目指すかによって、構築すべき文化が変わってくる。他の会社で上手く行っているビジネスモデルの要素だからといって、自社に持ち込んではいけない。企業の文化に応じて、9つの要素の組み合わせも異なるからです。

 ディズニーランドというビジネスは、顧客との親近感を重視しているのは間違いない。例えば、園内の水飲み場の飲み口は、親子が向き合えるように設計されています。そんなところからも、顧客に寄り添う文化を感じさせます。

 今回の娘の忘れ物は、決して高いものじゃない。むしろ、安い代物。だからといって、遺失物センターの対応は、テキトーには済ませない。届け出に合致した忘れ物が見つかれば、たとえ安いものであっても、こうして送ってくれるのです。

 経営の効率性を重視すると、そんなコストに見合わないことは切り捨てるのが合理的。一人ひとりに対応する手間は業務処理を煩わせるため、敬遠したい。一方で、商品やサービスの革新性を重視すると、顧客よりも先に進んでいることが是のため、同じ目線でいることはなじまない。

 しかし、顧客との親近感を重視すると、捉え方が変わります。顧客が大切なものを失くしたことで、楽しい思い出からのテンションを下げさせるか。それとも、高価でなくても大切なものが届けることで、最高の思い出を演出するか。

 こうして、ビジネスモデル・キャンバスでいう「顧客との関係性」で、パーソナルな対応を実践しているのです。自動化や標準化によって最小限・最低限の対応をすることなんて考えていない。

 付け加えるならば、ビジネスモデル・キャンバスでいう「顧客セグメント」にも着目できます。そんな落とし物を持ち去らない顧客も、このビジネスモデルを構成しているのです。落とし物を遺失物センターに届けたかどうかはわかりませんが、誰もそれを自分のものだとしない。ブレスレットは壊れてもいなかったため、踏みつけるような顧客もいないということ。顧客も含めてビジネスモデルを成立させているのが凄い。

 今日は、落とし物が届けられてほっこりとするとともに、ビジネスモデルの凄さを体感しました。これが、ディズニーマジック。

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