人って、意外と思い込みが強い。キャリアの悩みは、強固な思い込みが原因のことが多い。このブログの名称にあるABCの「C」は、キャリアを指すため、それへの関心も強い。「メンタル・コンフリクト・キャンバス」なるツールも開発しているほど。
と、完全に他人事であったのが、実は自分自身でも思い込みが強かったと気付かされた出来事がありました。その思い込みとは、海外の方はプレゼンテーションが上手に違いない、というもの。
誰もが流暢な説明と華麗な振舞いで観衆の心をぐっと掴んで離さない。そんなイメージを勝手に抱いていました。皆、TEDに出演できるほどのスピーチを繰り広げるものだと。
そう思い込んでいたのには、理由があります。ボクがこれまで受講した、海外の方が講師のセミナーでは、誰もがプレゼンテーションが上手だったため。
ボクもセミナー講師の端くれとして、その作法を身に着けています。それゆえに、講師としての凄さが理解できるところがあります。知っているからこそ味わえるような感じ。同時通訳であっても、凄さがビシバシと伝わってきます。
「うわっ、そんなふうに説明するんだ」
「なるほど、そういう使い方をするとスムーズにできるんだ」
「今の展開は、次のボクのセミナーで使おう」
このように、セミナーの内容はもちろんのこと、講師としての学びも多く得られるのです。やっぱり海外の方は違うなと、どんどん、どんどん思い込んでいく。
もっとも、日本にわざわざ呼ばれて、セミナーや講演を務めるほどの方たち。日本に来る前にも、世界各国でセミナーや講演を開催し、また、好評を得ています。スポーツでいえば、世界大会の予選を勝ち抜いてきたようなもの。そりゃ、プレゼンテーションが上手なハズです。こうしてボクの思い込みが強化されていったのです。
で、つい最近、海外の方たちが講師を務めるセミナーを受講していました。講師を務めていたのは、海外の方たち。その組織でトップクラスの人たちが、直接、登壇するという貴重な機会。そのうちのお一人は、今回が初来日。
ボクの期待値はこれ以上なく高まります。「さて、今日はどんな学びが得られるだろうか」と。受講者というよりも、ひとりの講師としてワクワク、ドキドキしていました。
ところが。
なんだか、フツー。話もそうだし、スライドもそう。「あれ、TEDっぽいのはないの」と戸惑ったほど。まあ、それを提供することがメインではないため、ボクの勝手な期待に過ぎません。フツーなことをあげつらうつもりも、ありません。
ボクが言いたいのは、こうした思い込み、しかも、強固な思い込みが意識していないところである、ということ。冷静になれば、そんなの思い込みだろと自分にツッコミを入れることもできます。
しかし、そんな思い込みがあることも気づかなければ、「期待が外れた」「思っていたのと違う」などと一人勝手にがっかりするだけ。だから、自身の思い込みに気づくことは、とても大切なことなんです。
こうした強固な思い込みを探っていくツールに、「免疫マップ」があります。これは、発達心理学者であり、ハーバード大学教育大学院教授でもあるロバート・キーガン氏が開発したもの。著書『なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践』(英治出版)で紹介されています。
確かに、これを使うと強固な思い込みに気づくことができます。ボク自身もそうだし、これを後輩に教えたときにも気づきがあったようです。A4サイズの紙が一枚あれば、そこに思い込みがあぶり出されます。
ただ、それは何か課題を設定したときの話。どこかに向かいたい、何かをしたい。けれども、前に進めない。そういうときに免疫マップを使います。
これに対して、ボクの「海外の人はプレゼンテーションが上手」という思い込みは、いくらそれが強固なものであっても、あぶり出される機会がありません。誰かとの対話で指摘されなければ、自身で気づくしか方法はないのです。
そういう意味で、先日、参加したセミナーは、自身の強固な思い込みに気づけたことが最大の収穫でした。セミナーの内容にも学びはあったものの、ボク自身としては思い込みに気づけたことのほうが大きな学び。
教訓。見た目に惑わされてはいけない。ということは、見た目を工夫すると、相手に影響を与えることができるってこと。その話は、、、また、別の話。