ツールの作成。なにげにボクは得意なほう。これまでの監査法人の中でも、各種のツールを作ってきました。
その筆頭は、監査調書。会計監査を実施する際に、その過程と結果を文書化するもの。必要な事項が漏れなく検討できるように組み立てなければなりません。そんな構造を現実のものとするのが、このうえなく好き。
こうした大きめな構造としての創造もあれば、もっと小さめのテクニカルな工夫もあります。ちょっとした配慮があるかないか。それが、ツール作成のセンスの違い。
会計監査に限らず、自身がツールを使う側にいるときに、センスの違いに残念になります。何かの記入用紙だったり、チェックリストだったりと、それを活用する局面で、「ここをこうすると、もっと使い勝手がよくなるのに」と改善したくなってしまう。
例えば、多くの人の作業をなくすことができる工夫が挙げられます。何かのひな型があるときに、それを組織に転用する局面があります。ひな型はその組織にだけ使うことは想定していないため、自社用にカスタマイズしたほうが効果的かつ効率的。
ところが、そんなカスタマイズを行われずに社内展開されるものがあります。そのカスタマイズを怠ったために、その組織の人たち全員が、使用する都度、手直ししなければならない。
たとえ手直しの時間が数十秒だとしても、全社としては、それに組織の人数と使用する頻度とを乗じた時間をかかってしまう。リリースするときに、そのカスタマイズさえ行っていれば、ゼロにできた時間。
こういう事態を避けるには、2つの方法があります。
1つ目の方法は、ユーザーが使用する状況を想像すること。現場で使用するときに、ユーザーが何をするかの工程をひとつひとつ思い描くのです。カスタマージャーニーと言ってもよい。すると、無駄な作業が浮かび上がってきます。
しかし、想像に頼る方法では、人によって温度差が生まれてしまう。どこまで具体的かつ詳細に想像するかによって、思い描く現場の様子が違うものになってしまうから。そこで、別の方法が良いことがあります。それが次の方法。
2つ目の方法は、リリースする前に使ってみること。簡単に言えば、「試用」です。しかも、たった一度のトライアルではなく、何度も、さまざまな状況で使ってみる。
想像では人によって異なるものの、ツールを試せば、自身が何を強いられるかを体感できます。これ以上、気付きが得られるものはありません。もちろん、注意深くする必要はあるものの、頭の中だけじゃなく身を持って感じられる分、自ずと見えてくるものがあるハズ。
イノベーションを起こすステップを踏まえると、最終成果物をリリースする前には、プロトタイプを製作し、かつ、テストを重ねていきます。ツール製作でセンスがない人に限って、プロトタイプにすぎないものを最終成果物としてしまうのです。
テストのステップを省いてはダメ。ただし、リリース時期を逃してしまうようなテストのやり過ぎは意味がない。しかし、それさえ気をつければ、ユーザーの使い勝手を向上させるためには不可欠なステップ。
今日の午後のある時間帯に、そんなことを思いながら、新しいツールの作成に勤しんでいました。だって、仲間が使うツールですからね。