Accounting

職業的専門家としてキャッチアップか、先に行くか

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この世の中には、職業的専門家と呼ばれる人達がいます。例えば、弁護士や公認会計士、税理士など。いずれも、その分野のプロとして活躍しています。

 自分が専門外の分野にいると、その分野の専門家は何でも知っているイメージがあります。弁護士ならあらゆる法律に詳しいし、税理士ならあらゆる税金に詳しいと。

 確かに、法律なり税法などの基礎を身に着けているため、ちょっと調べれば相当の理解が得られることもあるでしょう。素人では到底及ばないほどの短時間で、深い知識を身につけられるはず。

 しかし、そんな専門分野があったとしても、必ずしも、あらゆることに精通しているとは限りません。専門家を名乗る分野の中でも、さらに専門としている分野があるからです。

 さきほどの法律や税法といっても相当に範囲が広い。知識もさることながら、実務面まで気が回るまでには、より専門とする分野に明るい方のほうが、依頼者として良いことが多いでしょう。

 一方、ボクもそのひとりである公認会計士は、あまり、より専門とする分野を名乗る方が少ない印象です。中には、「後発事象に詳しい」「繰延税金資産の回収可能性に強い」「M&A会計に明るい」という会計士は存在するでしょう。あっ、どれもボクが本を書いたものでした。

 ただ、会計監査を行うにあたって、その分野だけ詳しくても仕事にならないのです。企業の経理や財務報告が、後発事象だけなら、より専門とする分野で食っていくこともできるでしょう。

 でも現実は、そうではない。企業の活動はさまざま。会計基準の数だけ企業の活動がある。いや、会計基準になっていない事象があるため、むしろ、それ以上。なので、全般的に会計基準のことを理解しておく必要があるのです。

 しかも、会計基準だけ押さえれば良いってもんじゃない。それは、保証対象である財務諸表の作成基準。その財務諸表に対して保証業務を行うための監査基準や実務指針についても理解し、かつ、実践できなければならない。

 それは作成者の過程をなぞるものではなく、監査という観点から違う切り口で検討を加えていくもの。だから、会計基準を理解するのは当然として、そのうえの監査基準や実務指針も実践できなければ業務が行えないのです。

 例えば、財務諸表の作成者の方々は、ひとつひとつの取引処理の積み上げで決算書を作っていく印象が強いかと。適正な取引処理を重ねた結果は、当然に適正だと。いわば、PL的な発想

 これに対して、会計士は、あるべき残高からアプローチします。こういう取引を行っているから、こういう残高になるべきだと推測したうえで、資産や負債の帳簿残高を検討しに行きます。いわば、BS的な発想。

 この他にも、あるべき残高や計上額とは異なる切り口からもアプローチします。仕訳が入力される状況に異常な点はないか、社内の意思決定や稟議に照らして必要となる会計処理はないか、まったく違う局面や時期で得た情報と不整合はないかなど。あるいは、統計的な観点からの異常値の有無なども。

 このように、作成者の積み上げとは違う検証をこれでもか、これでもかと重ねていく。これが会計監査。そのための考え方やスキル、ツールなどは、都度、アップデートされていきます。過去の杵柄でやっていける期間は極めて少ない。

 こういうことを踏まえると、監査業務を行っている公認会計士は、2つのパターンに分けられます。ひとつは、アップデートされら事項のキャッチアップに必至な方、もうひとつは、それよりも先に行く人。

 以前に知り合いから聞いた話では、監査役とのコミュニケーションの場で、「私は今の監査についていけない」とこぼした方もいたようで。定年間近の会計士だったようですが、正直と言うか何というか。聞いている監査役サンにしてみれば、不安でしょうがなかったでしょう。

 なので、会計監査を行う公認会計士として現役でいるなら、先に行かなくてもキャッチアップは最低限、必要。たとえ、監査チームのメンバーが稼働できなくなっても、監査報告書にサインする業務執行社員がひとりでも業務を遂行できるだけの技量が欠かせない。

 そのためには、常に学びの姿勢が必要です。会計もそうだし、監査もそう。それらを実現するための多方面のインプットやスループット、アウトプットも不可欠。

 ボクの話で恐縮ですが、以前に現場責任者の後輩が体調を崩したときには、現場を仕切り、科目も持ち、表示も検討しながら現場を進めていきましたから。職業的専門家として現役でいるなら、常に学ぶ必要があります。

 そうそう、財務報告について、キャッチアップではなく先に行く話として挙げられるのは、有価証券報告書の記述情報。たまたま、最近、記述情報を充実させるための社内体制づくりのヒントを『ダイアローグ・ディスクロージャー KAMを利用して「経営者の有価証券報告書」へとシフトする』(同文舘出版)にまとめました。ぜひ一度、お手にとって、ご確認ください。

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