Accounting

寄稿「監査人交代時に企業が注意したいKAMのポイント」

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

ついに、KAM(監査上の主要な検討事項)の分析記事が掲載されました。掲載されたのは、企業の情報開示を専門とする株式会社プロネクサスさんの実務支援サイト「PRONEXUS SUPPORT」です。なんと、今後、4回にわたる特集記事なんです。

第一弾のタイトルは、「監査人交代時に企業が注意したいKAMのポイント」。JICPAのセミナーで「わが国におけるKAM分析の第一人者」と紹介されたように、他では読むことのできない分析内容を解説していきます。これを読むと、KAMとは、経営者や監査役等が関心を持つべきものであることが理解できるでしょう。

■KAM分析の3つのアプローチ

KAM分析の記事と聞いたときに、どのような内容を思い浮かべるでしょうか。

まず、ある年度のKAMすべてを定量的に分析するアプローチが挙げられます。KAMの個数は平均でいくつだったとか、このテーマのKAMが多かったとか、全体的な傾向を調べるものです。これについては、JICPAを筆頭に分析結果が公表されているため、ボクがこれと同じことをしても意味がありません。

次に、具体的な事例を取り上げて解説していくアプローチが挙げられます。全体的な傾向に対して、個別の内容を分析していくものです。こちらを思い浮かべることも多いでしょう。拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』もこのアプローチによっています。

ただし、事例の選定の仕方によっては、特定の企業や監査人を評価することになります。4,000社近い上場企業のKAMすべてを解説する機会でもなければ、事例として選定した理由の適否が問われかねません。

最後のアプローチとして、一定の範囲から論点を炙り出していくものが挙げられます。よく見かけるのが、テーマ別の分析です。減損のKAMはどうだった、繰延税金資産の回収可能性のKAMはこうだった、というものです。これであれば、特定の企業や監査人を評価することにはなりません。

そこで、ボクのKAM分析特集は、3つ目のアプローチを採用しました。ただし、よくあるテーマ別ではなく、もっと視点を変えたものとして。その第一弾が、監査人が交代したときのKAMの比較です。

■第一弾の記事の特徴

監査人の交代に焦点を当てた理由は、監査人が交代した企業について、前任の監査人と後任の監査人のKAMを比較していたときに、気になった論点があったからです。ボクが大手、準大手、中小という3つの規模の監査法人で監査経験があるからこそ、目を引いた論点ともいえます。

監査人が交代したときに、前任、後任のどちらも同じテーマのKAMを取り上げている場合があります。しかしながらも、前任の監査人はある手続の記載があるのに対して、後任の監査人はその記載がないことがあるのです。記事をご覧いただくと、きっと納得されることでしょう。

この理由について、記事では16パターンがあると図示しました。このうち、2つのパターンは、財務諸表監査の品質に直結します。監査の品質が相対的に低いと、財務諸表の信頼性にも影響を及ぼしかねません。そこで、その指摘にとどまらず、企業としてどう対応すべきかについても解説しました。

■KAM品質の検討材料

もともと、KAMは、監査の信頼性が問われている状況のもとで打たれた対策のひとつ。つまり、信頼性を期待される水準に引き戻すためのものです。「リスクが的確に識別され、かつ、適切に対応されているなら、この監査は信頼できる」と評価されることを意図しています。

反対に、KAMの報告を通じて「リスクが的確に識別されていない」「リスクに適切に対応できていない」と判断されたときには、「この監査は信頼できない」と捉えられます。こうして、監査の品質が良くないと評価できる材料が提供されるのです。

KAMを分析していく中で、「こんなKAMでは監査の品質が心配だ」と思うことがあります。そう思えるのは、監査実務の経験があるからこそ。ならば、実務の経験に照らした分析結果を共有するのが良いのではないか。それによって、企業側の関心が高まれば、KAM協議がより有益に行われ、また、KAMの品質つまりは財務諸表監査の品質がより向上することを期待したのです。それが、今回の企画の趣旨です。

特集記事を通じて、財務諸表監査の理解につながると嬉しいです。ぜひ、「こんな観点で分析ができるんだ」を体感してください。

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