2025年4月28日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、IFRS S2号「気候関連開示」に対する的を絞った修正案を公表しました。さらに5月14日には、その要点を27分45秒に凝縮したウェブキャストで披露しています。
- Webcast: What you need to know about the ISSB’s proposed targeted amendments to IFRS S2(仮邦題「ウェブキャスト:IFRS S2に対するISSBの的を絞った修正案について知っておくべきこと」)
https://www.youtube.com/watch?v=fmzTfrIlQ-g
4つある修正項目のうち、最終化までの動向を見守りたいのが、スコープ3カテゴリー15、つまり「投融資に関するGHG排出」の測定および開示に関する見直しです。これは一見、金融機関に特有の論点のように見えるかもしれません。しかし実際には、業種を問わず広範な企業に「見えない落とし穴」として影響を及ぼす可能性を秘めているのです。
しかも問題は、影響範囲の広さだけにとどまりません。この修正案には、開示本来の目的、すなわち開示による排出削減の推進そのものを骨抜きにしかねない、基準設計上の「深いひずみ」が潜んでいるのですよ。そこで、その構造的なリスクと、開示基準が抱える限界に光を当てていきましょう。
■全企業に忍び寄る「カテゴリー15」の正体
カテゴリー15に関する修正案を理解するために、現状の開示要求を整理しておく必要があります。この図は、私がセミナーで用いたスライドです。修正案だけでなく、ISSB基準とSSBJ基準との違いも明らかにしていますよ。