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投資家の心を掴む「予想される財務的影響」の開示技法

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2025年8月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表した「ISSB基準の適用にあたっての予想される財務的影響に関する情報の開示」と題する教育的資料は、単なるガイダンス文書の域を超えた価値を持っています。翌月にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が翻訳版を補足文書として公表したことからも、その実務的重要性が伺えるでしょう。

  • Disclosing information about anticipated financial effects applying ISSB Standards

https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2025/08/disclosing-information-anticipated-financial-effects

この資料の真価は、抽象的な基準を具体的な開示実務へと橋渡しする「翻訳技術」を体系化している点にあります。とりわけ第3章で示される5つの開示例は、企業が複雑なサステナビリティ要因を投資家に理解可能な財務情報へと変換する際の知的プロセスを鮮やかに描写しています。まさに、規制対応という表面的な作業を超えて、投資家との戦略的対話を実現する「秘伝のレシピ」が込められているのです。

本稿では、これら5事例を横断的に解剖することにより、開示の背後に潜む共通の構造的手順と、企業が直面する実務上の難題への解法とを明らかにします。その狙いは、形式的な規制遵守を脱却し、投資家から真の信頼を勝ち取る戦略的開示の在り方を探求することにあります。

 

産業別基準からモジュール化へ――制度設計革命の深層を読み解く前のページ

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