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NOと言えないのには根拠がある

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。)  

 質問。一見、簡単そうな手法でありながらも、実は難しいもの。単に「~ですか」と聞いて、真の回答を引き出せるとは限らない。それは、回答者が意図的かどうかを問いません。

 ボクの本業である会計士は、英語”Auditor”で表します。この単語に”Audio”が入っているように、会計士とは聞くことが仕事。だから、質問の技法も学んだり、実践したりしています。

 

 そんな質問のひとつのテクニックに、「NO」を引き出す手法があります。例えば、今回の決算で会計処理を変えたものがあるかどうかを尋ねるとき。

 このとき、「今回、会計処理を変えたものはありませんよね」という質問だと、「YES」と答えがち。「YES」の返事は、「まあ、そう言っても構わないかも」「そうかもしれないけど・・・、え~、まあ」という曖昧なニュアンスでも回答できるからです。また、誘導質問にもなってしまうため、その返事が真実ではないこともあるのです。

 しかし、「いつもと違う会計処理はありますか」と質問すると、「NO」という回答はテキトーにはできない。なぜなら、根拠が必要だから。曖昧な状態では、なかなか「NO」とは返答しにくいのです。

 

 そんな「NO」という返答に関して思い出すのは、『「NO」と言える日本』という本。盛田昭夫サンと石原慎太郎サンによる共著によって、1989年1月に発売されて話題になりました。

 ウィキペディアによると、「アメリカ合衆国のビジネスの方法に批判的な目を向け、日本が多くのこと、ビジネスから国際問題にまでに関して他国に依存しない態度を取るべきだ、と主張している」とのこと。

 本のタイトルや、当時のメディアでの取り上げられ方などから、「日本人は、NOという返事ができない」という印象を刷り込まれました。日本人は気後れしているのかな、空気を読んでいるのかな、あるいは、お人好しすぎるのかなと、NOと言えない理由をボクなりに考えていたものです。

 確かに、アメリカ人をはじめとした海外の人たちは、いとも簡単に「NO」と言えそう。背格好もしっかりしていそうだし、語気も強そうだし、なんだか自信満々にプレゼンもしそうだし。ほら、「~すべきだ。なぜなら、3つの理由がある!」と三本指を出していそうな感じ。

 あれから、30年。実は、日本人だけがNOと言えないのではないことを知ったのです。「え~」って感じじゃありませんか。

 

 以前の投稿「迷わず、毎日、書き散らせ」で話したとおり、今、ティモシー・フェリスさんの『トライブ・オブ・メンター 人生を成功に導く勝者のアイデア』(ダイレクト出版)を読んでいます。663ページのボリュームも、もう少しで読了。 

 この本は、著者が自問自答していた疑問について、100人を超える著名人に質問してみたときの回答を収録したもの。それぞれに11の同じ質問を投げています。その中には、次の質問があります。

 

過去5年間で、上手に「ノー」と言えるようになったこと(娯楽や誘いなど)はありますか?

 

 この質問を選んだ理由は、「YES」の返事は簡単にできるのに対して、「NO」は難しいからだと説明されています。

 アレ、日本人じゃない人も「NO」って言いにくいの?

 しかも、この著者は、アメリカの人。あの『「NO」と言える日本』という本から、いかにも「YES」と言いそうなイメージを与えていたアメリカの方なんですよ。

 アレアレ、そんなアメリカ人も「NO」って言いにくいの??

 実際、この分厚い本に収録されている著名人の回答を読んでいると、「NO」と言えるようになるまでに苦労した、時間がかかったと話しています。もちろん、そんな悩みはないような回答をする方もいるものの、どちらかというと上手に「NO」と言えるように工夫している方のほうが多い。

 

 なんだ、みんな、同じじゃない。30年前に植え付けられたあのイメージは、一体、何だったんだろう。情報というのは、無批判に受け入れてはダメですね。そのためには、学び続ける必要があります。

 あなたは、学びを止めているものがありませんか。

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