キャリアで、この2つの選択肢に悩む人がいます。ひとつは、好きなことをしていくこと。もうひとつは、得意なことをしていくこと。このどちらを選べばよいか、もっと言えば、得意なことじゃなく好きなことだけをしていきたい、という悩み。
この選択肢は間違っています。これらは、ひとつだけしか選べないものではありません。いずれも選ぶことだってできます。そのときのキーワードは、パラレルキャリア。副業なのか、複業なのかは別にして、それらのバランスを考えながら並行すれば良い。
よって、本当のキャリアの選択肢とは、次の4つ。
(1)得意だけど、好きではないこと
(2)好きだけど、得意ではないこと
(3)好きなことで、かつ、得意なこと
(4)好きでもなく、得意でもないこと
ここで、「好きなこと」と「得意なこと」の違いを考えてみました。ボクの整理では、「好きなこと」は自分の満足度を高める行為なのに対して、「得意なこと」は自分以外の誰かの満足度を高める行為。
この2つのうち経済に繋がる、つまり、マネタイズしやすいのは、「得意なこと」のほう。その人より上手にできるから、お金をもらって代わりにしてあげるのです。料理や演奏、スポーツ、医療、法律、会計、教育など。自分のほうが上手いときには、わざわざお金を払ってまで誰かに頼むことはしません。
一方で、「好きなこと」は、満足を高める対象が自分に向いています。得意だろうと不得意だろうと、それをやっていることが楽しい。経済力が他で確保できているのなら、たとえ下手であっても続けていくことができます。
こうした整理を踏まえると、4つの選択肢は次のように考えられます。
選択肢(3)の「好きなことで、かつ、得意なこと」は、それをすることで自分も他の人も満足できます。このケースでは、キャリアに悩むことはありません。
選択肢(1)の「得意だけど、好きではないこと」は、自分は満足しないのですが、他の誰かに喜ばれるため、社会的な意義があります。これがキャリアの100%の割合を占めると、自分の満足度が極めて低いときには、辛くなってしまいます。
この場合、好きなことの割合を増やしていくことで対処できます。あるいは、経済力が十分に確保できているなら、一気に好きなことだけにキャリアチェンジしても問題がありません。
選択肢(2)の「好きだけど、得意ではないこと」は、自分が満足しているため、続けていけます。やり抜く力や折れない心なんてものも要りません。ただし、他の誰かの役に立ってはいないため、マネタイズは難しい。だから、それを続けられるための経済力さえあれば、選択することは可能。
選択肢(4)の「好きでもなく、得意でもないこと」は、それをすることで自分も他の人も満足していない状況。好きにも得意にもなれないなら、転職や起業といった形でキャリアを変更する道に進みます。
ただ、パラレルキャリアを前提とするなら、得意になるまで続けることで、経済力を確保しておく道もあります。キャリアチェンジに悩む人は、好きなことと得意なことがゼロか100の世界。一方をばっさり辞めて、また、もう一方をゼロから始めるという極端な考え方。いきなり変えたうえに、ゼロから始めるなんて、リスクそのもの。
ここでパラレルキャリアという発想が持てると、既存のキャリアを続けながら新しいキャリアを小さく走らせることができます。そこで実際に見込みがあるかどうかを確かめられます。つまり、新しいキャリアをテストできるのです。
もし新しいキャリアの見込みが立たないときは、既存のキャリアをこれまでと同様に続けていくだけ。リスクを極めて低く押さえられます。時間軸を1つから2つに変えることで、リスクを減らしていけるのです。
このとき、「いやいや、ウチの会社は副業が禁止なんですよ」と心配するかもしれません。だったら、小さく始める新しいキャリアは無料で試していけばいい。就業時間の定時外で、無料で行う活動に会社は文句を言えません。無料で始めた後に、軌道に乗りそうなら、有料へと切り替えていけば良い。
なお、選択肢(4)のときに、好きになるまで続ける道もあります。しかし、そのためには、やり抜く力や折れない心が必要なため、大変。あまりオススメはしません。
こうして、キャリアの悩みは二者択一ではないこと、また、パラレルキャリアの発想をもつとリスクを減らせることが理解できました。それでも悩みが解消しないときには、別の心理的な働きが作用している可能性があります。
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