Accounting

記述情報の早期適用は酷すぎる

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

えっとですね。驚愕の事実があるのですよ。それは、有価証券報告書の記述情報の話。

 少し前に取り扱いが改正されたため、今後は、重要な会計上の見積りについて言及しなければなりません。当期のウチの会社にとって、何が重要な会計上の見積りなのかを詳細に記載するのです。

 この改正、本来は2020年3月期以降からの適用になります。ただし、その一年前からの早期適用も認められています。そこで、早期適用した会社の開示をチェックしてみました。

 結果は、ひどい。重要な会計上の見積りに限っていえば、最近までの状況では、上場企業でこの改正を早期適用したのは20社。でも、半数近くが、意味のない開示でした。「意味のない」とは、開示した記載でもって、何も企業のことを知ることができない、という意味で。

 重要な会計上の見積りをはじめとして、2019年1月31日内閣府令第3号による早期適用は、そういうボイラープレート的なことを望んでいるのではありません。企業の固有の情報を開示して欲しいのにもかかわらず、大半が当たり障りのない記載でとどまっているのです。

 この大半とは、具体的な科目すら列挙していないのです。それじゃ、何の意味もない。重要な会計上の見積りについて早期適用するなら、その程度の記述で収まっていてはダメなんです。

 早期適用した中でダントツに光っていたのは、トヨタ自動車でした。この会社は、もう何年も前から優れた記述情報を開示していました。ちょうど今、執筆している原稿でも、この会社の記述情報が優れたものだと紹介しているところです。

 それ以外は、まず通り一遍の記載でとどまっているため、何が早期適用しているのかが、さっぱりわからない。何をもって、早期適用しているんだと胸ぐらをつかんで、問い正したい。まあ、それは財務局サンにやってもらうとして。

 もしかすると、悪い事例をお手本にしたのかもしれません。実際、これまで重要な会計上の見積りを記述している会社でも、その記載の深さには濃淡がありました。嘘、っというほどに浅い会社もあれば、見事と褒め称えたいほどに深い会社もあります。

 もし、嘘っというほどに浅い記述の会社をお手本にしたなら、その会社が悲劇。もっと、ボクの説明を聞かないとダメ。早期適用した事例に対して、財務局がどのような評価を下すのかが興味深々。

 規制当局が求めている開示に対して、十分な開示を行っていない会社に対しては、規制当局が「こらっ」とお叱りの態度を示さなければ、何も進展しません。もっと問題なのは、そんな低レベルな状況を分析して解説する記事。例えば100というレベル以上を目指すところ、20や30程度にとどまっているにもかかわらず、それがスタンダードだと勘違いさせるような分析記事を書くこと。それでは、執筆する意味が1ミクロンもない。あるべき姿を軸として批評しないと、何の進展も起きません。

 じゃあ、お前が記事を書けって? ボクが書くのは何の問題もないのですが、寄稿した先に迷惑をかけるかもしれません。だって、推奨できる事例は2,3しかありませんでしたから。

 だから、自分の単行本で、思うレベル感を説明していきますよ。というワケで、できるだけ早く仕上げるように頑張ります、ハイ。

音声入力の見返しには時間を置くな前のページ

内部統制報告制度をアップデートせよ! J-SOX 2.0次のページ

関連記事

  1. Accounting

    財務報告の充実の背景にある、企業側のマインド

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  2. Accounting

    財務報告の流儀 Vol.047 中外製薬、あずさ

    文豪ゲーテが開示責任者なら、自社に固有の情報を記載したでしょう。「一…

  3. Accounting

    ソーセージチーズフォンデュは後発事象を表す

    先日、居酒屋に、会計に明るい友人と行ったときのこと。頼んだメニューの…

  4. Accounting

    新型コロナウイルスで会計不正に要注意

    本日の2020年3月19日、プロネクサスさん主催のセミナー「棚卸資産…

  5. Accounting

    ビジネスモデル関連の機関誌に、記事が掲載されました

    もしも、会計士が、ビジネスモデルを探求する組織の機関誌に登場したら。…

  6. Accounting

    たちまち英語ができて、法律もわかるかも

    英語の構造と似ているもの。それは、法律。そんなことを感じたことはあり…

  1. FSFD

    アニュアルレポートにおけるSASB報告の海外事例
  2. Accounting

    そろそろ日本企業の決算の開示、見直しませんか
  3. FSFD

    サイバーセキュリティを4つの柱で開示した海外事例
  4. Accounting

    後悔しないための会計士選び
  5. Accounting

    寄稿「KAMと内部統制報告制度との関係」
PAGE TOP