「これ、どうすればいいの?」
少し前に、ある上場企業の監査役サンとお話しを伺っていたときのこと。新年度の監査が始まったため、監査法人からKAM(監査上の主要な検討事項)の候補となる内容が伝えられたようです。まだ文面は提出されていませんでした。
監査法人からKAM候補の複数の見出しを渡されただけであったため、監査役サンとしては今後、どう対応していけばよいのかがわからない。そこで、冒頭のセリフをボクに話したのです。
◎誰もが初めてのKAM対応
KAMの制度は、2021年3月期以降の年度から強制適用となるため、監査役としては初めての対応となります。ただ、これは監査法人サイドも同じ。早期適用を行っていない多くの監査チームでも、初めての制度対応です。
もちろん、前年にドライランを行っていた監査チームも少なくはないため、まったくの初めてではありません。当期は、前年の経験を踏まえて、さらに円滑にKAMの導入にあたっているでしょう。
しかし、いくらドライランを行っていたとは言え、実際にKAMが不特定多数の目に触れることになるため、その緊張感は随分と違ったものでしょう。執筆をはじめとして自ら生み出した文章が世間にさらされる経験のある会計士はそう多くはありません。そのため、監査法人サイドとしても強制適用となる当期は、KAMの進め方に苦慮している局面もあると考えられます。
◎企業サイドからのKAM対応
そうした中で、某所で近々に収録する研修「KAMの早期適用分析と今後の対応課題」の資料が完成しました。これは、監査人ではなく、監査役等を対象とした内容です。KAMの早期適用の事例を分析した結果から、KAMについての企業サイドからの対応を追求しました。
90分という短い時間ではありますが、2020年3月期の上場企業でKAMが早期適用された44社の中から、今後の対応課題が理解できる事例を14、ピックアップしました。このブログ記事のためにカウントしましたが、すごい数になりましたね。
盛りだくさんのようではありますが、改善の余地がある事例と優良事例とを対比させながら紹介するため、理解しやすいはずです。また、KAMをテーマごとに切り刻んだ分析では気づくことができない観点があるため、一部の事例紹介では、KAMの文面とは違う切り口で紹介しています。そのため、思うほどのボリュームではありません。
◎3ステップ、15のチェックポイント
一番の推しは、「KAM協議に関連して実施・検討すべき事項」のスライドです。KAMの協議にあたって企業サイドが行うことを、3ステップで整理しました。各ステップにはそれぞれ5つのチェックポイントがあるため、全部で15のポイントを提示しています。
このチェックポイントを一つ一つ潰していくことで、KAM協議の進捗状況がひと目で理解できます。冒頭に紹介した監査役サンとの会話があったからこそ、こうした実務的な整理には至ることができました。9冊の単著を発刊してきた経験が存分に活かされています。
これは、監査役等だけではなく、経営者側も含めた企業サイドとしての整理です。そのため、KAM対応の窓口となっている経理財務部門の方々も活用できます。というより、両者そろっての企業としての対応といったほうが正確です。
監査法人からKAMのドラフトを渡されたけれども、どうやって協議をしていけばよいのかが悩まれているときには、この15のチェックポイントを使って進捗を確かめてもらえたらと考えています。
この研修は動画で配信されるため、近いうちに収録が予定されています。このコンテンツを早く届けたいため、収録が楽しみ。
◎ここだけの統計データ
そうそう、おそらく他のKAMの研修では提供されないであろう統計データも盛り込んでいます。このデータは、企業サイドも監査法人サイドも、何気に実務的に役立つと確信しています。というより、ボクがまだ監査法人にいたなら、この視点で必ず検討するですから。
ただ、クローズドな場での研修のため、誰もが受講できるものではないかもしれません。そのときには、どこかのタイミングでこのコンテンツを提供していこうと考えています。なんせ、「KAM対応のスペシャリスト」ですから。
P.S.
日本におけるKAM早期適用事例の分析について、当ブログでは「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で解説しています。ただ、ワンコインの有料コンテンツとして提供しているため、「お試し版」をこちらで用意しています。
P.P.S.
2020年3月期のKAM早期適用事例の解説は、書籍『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』(同文舘出版)として発売されました!