こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。
先日、Twitter上で、こんなアンケートをとりました。企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示 に関する会計基準」のセミナーを開くとすると、次の中で、どんな感じかと。
- 選択肢「記載例があるなら、参加したい!」 90.9%
- 選択肢「セミナー中に、ある程度まで注記案が作れると最高〜!」 0%
- 選択肢「間に合ってまーす。」 9.1%
短い期間で回答を求めたため、その母集団は必ずしも大きいとはいえません。ただ、会計上の見積りに関する注記の記載例を説明するようなセミナーを希望する声が強いことは理解できました。
ファイナンス理論、踏まえていますか?
そんなセミナーの実現に向けた準備の一環として、関連する書籍を調査していました。といっても、会計ではなく、ファイナンスに関する本。
例えば、減損に関する見積り注記を考えるときには、DCFの考え方を理解していなければならない。その手法は会計基準には詳しく解説されていないため、企業価値の評価に関する知識が必要だからです。
そこでは、将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率という3つの要素が欠かせません。日本基準を採用していた場合に、これらについて説明する機会はありませんでした。
もっとも、気の利いた企業では、会計上の見積りに関する記述情報で言及していることもあります。ただ、記述情報の精度趣旨が理解されていなさそうな開示事例を見ると、そう多くはないでしょう。
パンドラの箱を開けかねないリスク
そのため、この3つの要素について、会計上の見積りの注記として言及する事例が登場するものと想定されます。そのこと自体は、財務報告の利用者にとっては歓迎すべき状況といえます。
しかし。
企業にとっては、そうとも言えない可能性があるかもしれません。もしも、万が一、ファイナンス理論を踏まえずに将来キャッシュ・フローを見積っていた場合、成長率や割引率を具体的に開示したときに、十分な理解がなく減損の検討を行っていたことが丸わかりになるからです。パンドラの箱を開けてしまいかねない注記なのです。
そのことを知らずに、開示の間際になって注記の文章を検討すると、ちょっと厳しい状況が待ち受けていそうです。監査人から指摘や指導があればよいのですが、それもスルーしてしまったときには目も当てられません。もっと早く、そのことに気づく必要があります。
KAMを分析していると早く気づきやすい
実は、KAM(監査上の主要な検討事項)が早期適用された事例を注意深く分析していると、そのことに早く気づきやすい。というのも、あの3つの要素について、KAMで報告されているだけではなく、企業の開示としても言及されている事例があるからです。
そんなKAMや企業の開示を説明している本が、来月の2021年2月に発売が予定されています。それは、ボクの新刊『事例からみるKAMのポイントと実務解説: 有価証券報告書の記載を充実させる取り組み』(同文舘出版)です。
あの3つの要素について、KAMであったり、企業の開示であったりと、少し突っ込んで報告している事例もあります。それを見ると、今の減損会計にファイナンス理論が十分ではないことに気づけるハズ。
できれば、そんなことも解説したセミナーを開催したいのですが、いつ頃、実現できるかがわかりません。それより、すでに予定されている本をご覧いただいたほうが、確実です。ぜひ、お手にとって、ご確認ください。
P.S.
2021年3月22日に、「見積り開示会計基準のフォーマットを予想する」という記事で、開示のフォーマットについて提案しています。こちらも、どうぞ。
続編は、ブログ記事「減損会計で、見積り開示会計基準「その他の情報」はこう書く」として投稿しています。合わせて、ご覧ください。
P.P.S.
Twitterで、見積り開示会計基準への対応についてつぶやいたときに、思いの外、反響があったため、急遽、関連資料をリリースすることとしました。ご興味のあるかたは、こちらから入手してください。
P.P.P.S.
見積開示会計基準に関する徹底解説について、書籍『伝わる開示を実現する「のれんの減損」の実務プロセス』でおこないました。こちらもご覧ください。