Accounting

2020年12月期のKAM早期適用事例は、一体、何社だったか

(記事にはプロモーションが含まれることがあります。) 

こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。

先日、名刺を交換した方から、「名刺には、『KAMの専門家』って書かないの」と聞かれました。KAM対応のスペシャリストと名乗っていることが浸透しているのかもしれません。それはさておき。

今日は、2021年4月1日。つまり、昨日が2020年12月期決算の企業における有価証券報告書の提出期限日。そう、KAMが早期適用されたかどうかが判明します。

12月期といえば、IFRSを適用している企業も多いため、KAMの早期適用事例も増えるのではないかとお伝えしてきました。さて、その結果は。

2020年12月期のKAM早期適用事例

2021年3月31日までに提出された有価証券報告書に基づくと、2020年12月期においてKAMが早期適用されたのは、7社。これには、2019年12月期に早期適用された企業は含めておりません。

個人的には、二桁は行くのではないかと根拠もなく予想していました。ただ、日本では2度目の緊急事態宣言が発令され、また、海外では一部の都市でロックダウンが行われた状況では、KAMどころではなかった企業や監査人もあったのかもしれません。

2020年12月期にKAMが早期適用された企業とその監査人について、有価証券報告書の提出順に並べると、次のとおり。すべて上場企業でした。

#企業監査人会計基準
1中外製薬㈱有限責任あずさ監査法人IFRS
2日本たばこ産業㈱有限責任監査法人トーマツIFRS
3花王㈱有限責任監査法人トーマツIFRS
4㈱グローバル・リンク・マネジメントEY新日本有限責任監査法人日本
5㈱荏原製作所EY新日本有限責任監査法人日本
6AGC㈱有限責任あずさ監査法人日本
7ピジョン㈱PwCあらた有限責任監査法人日本

 

KAM早期適用事例の分析

このブログでは、「財務報告の流儀」というシリーズ投稿で、KAMが早期適用された上場企業の事例をお伝えしています。

当初は、2020年3月期における早期適用事例を取り扱ってきました。こちらは、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説―有価証券報告書の記載を充実させる取り組み―』として整理し直しています。

  

出版後は、2020年3月期以外の分析結果も投稿しています。昨日の2021年3月31日に投稿した『財務報告の流儀 Vol.047 中外製薬、あずさ』からは、2020年12月期のKAM早期適用事例の分析にも着手しています。ご興味のある方は、ぜひ、ご覧ください。

 

日本の監査制度における「初めて」の座

さきほど、今回の結果には2019年12月期に早期適用された企業を含めていないとお話ししました。それは、キヤノン㈱のこと。

監査証明府令では、米国基準を採用している場合に、2019年12月期から早期適用が認められていた。同社は米国基準によっているため、日本の監査制度において「初めて」KAMが報告された事例となりました。

ところが、2020年12月期におけるKAMの報告でも、日本の監査制度における「初めて」の座を射止めています。今回の決算では、2度目のKAMの報告となるのに、「初めて」なのです。

それは、KAM制度のもとでの、監査人交代の事例。2019年12月期はEY新日本有限責任監査法人であったところ、2020年12月期は有限責任監査法人トーマツへと変更されています。監査人の交代という事象がありながらも、2019年12月期にKAMが早期適用されているのです。企業も監査人も、KAM制度に真摯に向き合っている姿勢が素晴らしい。

FRCによるKAM適用2年目に関するレポートの中では、監査人が交代された事例で、KAMがどのように変化したかを分析した結果が掲載されていたと記憶しています。こちらについても、どこかでお話しできれば。

余談

ここからは、まったくの余談。今回、KAMが早期適用された企業のホームページを訪れたときに、広瀬すずサンのCMに関する特設サイトをみつけました。

あのCMを見るたびに、15秒という短い時間の中で、多彩な表情を出せるなんてすごいな、と感心していました。ボクにはできないだろうな、とも。

その特設サイトには、CMのメイキング動画もアップされていました。広瀬すずサンが現場に入るところから始まり、撮影前に振り付けを練習している様子があり、また、実際にカメラの前で収録していく光景も収められています。

最初の撮影では、広瀬すずサンも勝手がつかめていないためか、表情も動きもやや硬め。それが回数を重ねていくほどに、顔の表情や体の動きが豊かになっていく。最終的に、放映されるCMで見せた表現に至ります。

そういう意味では、最初は不出来でも問題ないことがよくわかります。行動を起こすことで、改善のヒントが得られる。ビジネスも人生も、この繰り返しではないでしょうか。

ボクも、KAMや記述情報の分析やサポートを続けていきますよ。あなたは何を続けますか。

P.S.

2020年3月期に早期適用されたKAMについて分析した結果は、拙著『事例からみるKAMのポイントと実務解説』にてご覧いただけます。まずは、こちらの紹介ページをご確認ください。

 

財務報告の流儀 Vol.047 中外製薬、あずさ前のページ

編集者の配慮が詰まった「東京CPAニュース」次のページ

関連記事

  1. Accounting

    記述情報のコンテンツ提供で新しい可能性

    先日から一人、騒いでいる記述情報の件の続き。記述情報とは、3月末決算…

  2. Accounting

    リスクアプローチって、なんなん?

    唐突だけど、「理不尽」って言葉があるじゃない? 道理に合わないことや…

  3. Accounting

    出でよ、ディスクロージャー委員会

    企業の開示関係者にとって悩ましい課題といえば、気候変動と人的資本。…

  4. Accounting

    現る、KAMのフリーライダー

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  5. Accounting

    M&Aの世界に見る、キャッチーな専門用語

    人は、お金が絡むと、詩人になる。ホラ、競馬でも、株式投資でも、やたら…

  6. Accounting

    KAMの本が弁護士向けの情報専門誌で紹介される理由

    こんにちは、企業のKAM対応のスペシャリスト、竹村純也です。…

  1. FSFD

    初開催の「気候会計・監査ハイブリッド評価」セミナー
  2. Accounting

    『組織ガバナンスのインテリジェンス』の知見を通じて解く、CG報告書の訂正実務
  3. Accounting

    ESG情報の重要性が理解できる研修を受けました
  4. FSFD

    実務対応基準の必要性浮上:混乱回避のためのSSBJの対応
  5. Accounting

    決算短信をアップデートする2つの方策
PAGE TOP