企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の注記に、経年変化を記載されていますか。
というのも、前年度の開示項目を当年度に記載しなかったことを開示している日本企業があるからです。まだまだ事例は少ないものの、なぜ、当年度に開示項目としていないことの理由が説明されています。
そんな見積開示の経年変化について、2023年の事例をセミナーで紹介しました。そのセミナーは、今日の2023年11月7日、株式会社プロネクサスさんで収録してきた「見積開示会計基準実践講座~どの見積り項目を選び、どう書くべきかを明確にする~」です。
昨年に開催した同テーマのセミナーでも、見積開示会計基準の適用2年目を迎えたことから、経年変化の開示事例を紹介しました。今回は、経年変化の全体像がつかみやすくなるよう、事例の紹介のみならず、取りうるパターンについても示しました。
ここで、「あれ」と疑問に思ったかもしれません。「見積開示って、毎期、同じになるケースもあるでしょう」と。例えば、建設業やソフトウェア業では、履行義務の充足に係る進捗度が合理的に見積もることができる場合には、原則として、一定の期間にわたって収益を認識していくため、これは重要な会計上の見積りだろう、と。
確かに、会計としては重要な見積り項目かもしれません。しかし、だからといって、直ちに見積開示会計基準における「開示する項目」に該当するものではありません。該当するためには、3つの要素をすべて満たす必要があるからです。そのような案件が毎期ある場合に限って、毎年継続して「開示する項目」に該当するのです。
収益認識に限らず、見積開示は常に同じ項目が選定されるとは限りません。そのため、入れ替わりがあるほうが企業経営にとって自然なことなのです。こうした文脈からは、見積開示会計基準における「開示する項目」が変化していることは、適切な選定を行っている証拠ともいえます。これをしなければ、必要以上にリスクを過大に表現している可能性があります。
このときに、その理由まで言及されていると、財務諸表の利用者は、その見積りについての理解が深まります。新規に開示される場合には、利用者の理解に資する情報の中で理由が記載されることもあるでしょう。しかし、前期に開示していた場合で、当期に除外したときには、特段の手当をしない限り、その理由が開示されることはありません。そこで、任意の記載事項ではあるものの、利用者の理解を深めるために、前期に開示していた項目の顛末を説明する実務が登場しているのです。
実は、経年変化の任意記載は、監査人によるKAM(監査上の主要な検討事項)でもみられます。なぜ、前期に重要とした事項が当期には重要とされなかったのかは、利用者の関心の集まるところです。そうしたニーズに応える実務上の工夫が、この経年変化に関する説明なのです。
こうした経年変化の記載も含めて、見積開示の実務にはまだまだ改善の余地が多いものと考えています。それは、開示する場合はもちろんのこと、開示しなくても良い場合も含めての話です。
そこで、セミナーでは、「識別なし」を除いた9つのテーマで、22社の事例を紹介しています。もちろん、最新の事例を中心に厳選しました。こうした優良事例から、次回の見積開示にあたって改善すべき点が具体的にイメージできるようになるでしょう。
見積開示の「選び方」から「書き方」まで網羅した3時間セミナーは、現在、株式会社プロネクサスさんでしか行っていません。このブログ記事のトップの画像は、セミナー資料の一覧です。表紙を含めて103枚という情報量を得る唯一の機会です。
これを逃すと、次は一年後になるかもしれません。過剰な開示を回避し、充実した開示を行いたいなら、今すぐ、ご視聴ください。