気候変動への対策が世界的な課題となる中、企業の環境報告はかつてないほど重要視されています。その中でも、GHG(温室効果ガス)プロトコルは、企業が自らの排出量を測定・報告するためのグローバルスタンダードとして定着しています。しかし、このスタンダードが今、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)による新たな基準の導入によって大きな変革を迎えようとしています。
企業の買収や売却、合併といった大規模な構造変化は、これまでのGHG排出報告の枠組みを根本から揺るがす可能性があります。従来のGHGプロトコルは、こうした変化に対応するために過去のデータを遡及的に再計算するプロセスを重視してきました。
それに対して、ISSB基準が提案する新しいアプローチは、企業がどのように比較情報を開示すべきかに対する新たな視点を提供します。つまり、従来と同じような開示をしていては、ISSB基準やSSBJ基準案に基づくサステナビリティ開示にはならない可能性があるのです。
そこで今回の特別記事では、従来のGHGプロトコルによる開示の方法を理解したうえで、ISSBのスタッフがどのように比較情報を開示すべきかを検討しているかについて解説します。この内容は次のとおりです。
- 環境パフォーマンスの透明性を追求するGHGプロトコル再計算
- 比較情報の再計算の是非を巡る熱論
- 時をさかのぼらない、ISSBの比較情報
- 大規模な構造変化による比較情報の取扱い
- まとめ
この記事を読むことで、企業が大規模な構造変化を行った際に、GHGプロトコルで求められるGHG排出量の再計算方法について理解できます。また、ISSB基準の下での比較情報とGHGプロトコルによる再計算との違いを明確に把握できます。さらに、ISSB基準におけるGHGプロトコルの限定的な役割を把握できるため、財務報告における気候関連のサステナビリティ開示に役立てることができます。
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