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「同じ改正を取り込んだ」はずなのに――SSBJ改正案に残る”因果の断絶”をどう読むか

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2025年12月15日、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、2025年3月に最終化した3つの開示基準を修正する公開草案を公表しました。その狙いは、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が2025年4月に公表した公開草案「温室効果ガス排出の開示に対する修正―IFRS S2号の修正案」に示された方向性を取り込むことで、SSBJの開示基準をISSB基準と整合させることにあります。

もっとも、手続は一筋縄ではいきませんでした。ISSBの公開草案が2025年12月に最終化される見込みであった以上、その公表を待ってからSSBJが改めて基準内容を点検したうえで、公開草案の公表手続に入っていては、2026年4月からの適用に間に合わないという時間的制約が生じます。そこでSSBJは、ISSBの結論の方向性がすでに一定程度示されていたことを前提に、ISSBの最終化を待たず、2025年12月11日のSSBJ会合で、ISSBの修正方向性を取り込んだ公開草案の公表議決を行ったのです。

そして、その直後の同一日に、ISSB側で確定された「温室効果ガス排出の開示に対する修正―IFRS S2号の修正」(以下「新S2号」という)が公表されました。SSBJはこの確定内容を踏まえ、公表議決した草案に文言の修正を加えたうえで、公開草案として公表するに至ります。なお、公表議決時点から変更となった箇所は、「コメント募集及び本公開草案の概要」の別紙で説明されています。

ここで実務家の関心は自然に一点に集約されます。SSBJの公開草案は、新S2号をどの程度まで精緻に写し取れているのか、という問いです。一見すると改正内容は反映されているように見えるものの、ISSBの原文と突き合わせると、規定の立て付けが必ずしも同一でない箇所が残ります。

そこで本稿では、「スコープ3」「カテゴリー15」に関するGHG排出の測定および開示に焦点を当てながら、新S2号とSSBJ公開草案の差異が生じ得る箇所を、規定の”因果構造”に着目して整理します。SSBJが最終化へ向かう過程で修正される可能性がある論点であるため、実務対応としても見逃せない論点なのです。

 

ロケーション基準が「特例」からこぼれ落ちるとき――温対法とSSBJが突きつける同時準拠の限界前のページ

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