物事を絵にすること、お得意ですか。これから3つのお題を出しますので、頭の中で想像してみたり、実際に絵に描いてみたりしてください。
最初のお題は、りんご。これをどう描きますか。これは比較的、簡単でしょう。りんごの輪郭と枝の線が描ければ、それっぽくなりますからね。
次のお題は、犬です。顔だけを描く人もいれば、全身を描く人もいるでしょう。いずれにしても、猫をはじめとした他の動物に見える描き方をしているかもしれません。犬と他の動物との違いが表現できているかがポイント。
最後のお題は、会社。これ、難しくないですか。「うっ」と詰まった方もいらっしゃるでしょう。なぜなら、抽象的な概念だから。具体的な実体がないため、描きにくいのです。
りんごも犬も、実際に存在しています。もちろん、種類によって細かな点は異なります。色や形、大きさなど違いはあります。しかし、多くの人が想像しそうなものがあります。そこから特徴的なものを描くと、それっぽく見える。
一方で、会社といった抽象的なものは、人によって思い描くものが様々。他にも、「愛」だとか「平和」だとかも具体的に実在するものではありません。人によって「会社」や「愛」や「平和」などのイメージが一致していない。そもそも、文字あるいは感覚として受け取っているだけで、形としては捉えていないこともあるでしょう。
このように、抽象的なものを具体的に描くことは簡単にはできない。それができないと決定的にダメなことはありませんが、できることのメリットもあります。絵やイラストにするメリットには、発想が広げられることや印象に残しやすいことが挙げられます。
特に、セミナーや研修で講師を務めたり、ファシリテーターを務めたりするときに、このイラスト化ができると、参加者の理解を促進させるにも記憶を定着させるにも良い。使わない手はない。
そんな観点でいうと、経済に関する解説をイラストで行うことは難しい。抽象的な概念ばかりですからね。「お金」ですら概念。だから、クリエイター集団のホイチョイ・プロダクションズさんによる『マンガ 恋する株式相場!』(ダイヤモンド社)には、ホント、驚かされます。
ストーリーが面白いのはもちろんのこと、イラストによる解説が秀逸。この漫画のストーリーを考えているのは、ホイチョイ・プロダクションズ代表の馬場康夫サン。絵は、イラストレーターの高田真弓サン。
馬場康夫サンがイラストまで細かく指示しているのか、高田真弓サンが解説文から着想しているのか、あるいは、その組み合わせなのかは分かりませんが、見事に抽象的な概念をイラストで表現しているのです。
ちなみに、「会社」に関する説明では、ビルに顔や手足を描いて擬人化しています。ビルだけのイラストは容易に想像できる。ただ、それだけでは無機質で面白みがない。
ところが、これを擬人化すると、表情や動きを付け加えられます。会社が活き活きと描ける。また、複数の会社を説明していても、その区別がつきます。こういうところをひとつ取り上げても、講師やファシリテーターにとって役立ちます。
きっと、イラストレーターの高田真弓サンの絵のタッチも、経済の解説に親しみやすさを与えている要素のひとつ。登場人物のひとりひとりがキュートで、また、色使いはカラフルでポップ。
一言でいえば、ボクの大好きなイラストレーター。いつか、ボクが書いた本の表紙は高田真弓サンのイラストで飾りたいと切望しています。ぜひに、ぜひに。
P.S.
なんと、高田真弓サンとの共演が叶いました! それは、拙著『ダイアローグ・ディスクロージャー』の表紙。ホント、嬉しいっっっ!!