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SSBJ案の「産業分類ルール」――判断構造の可視化という、見過ごされた本質

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2025年12月、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、同年3月に最終化したサステナビリティ開示基準について、これを修正する公開草案を公表しました。本公開草案には、同月にISSBにおいて確定されたIFRS S2号の改正、すなわち温室効果ガス排出の開示に関する修正内容が反映されています。

ここで多くの実務家が抱くのは、「SSBJがISSBの改正を取り込んだのだから、両者の整合性は保たれているはずだ」という前提でしょう。しかし、この前提こそが危ういのです。なぜなら、SSBJが採用している基本方針は、「ISSB基準の文言を写し取ること」ではなく、「ISSB基準と整合的な情報開示が結果として行われる枠組みを構築すること」だからです。

その整合性は、規定の文言や構造が一字一句一致しているかによって判断されるものではありません。投資家に提供される情報の内容や有用性が、ISSB基準に基づく開示と実質的に同等であるかどうか、この実質的な観点から評価されることが大前提なのです。

この考え方に立てば、商業銀行や保険に関するファイナンスド・エミッション等の産業別分解についても、SSBJ公開草案に準拠した結果として開示される情報が、IFRS S2号の改正が想定する情報内容と同質であるかどうかが決定的に重要となります。ここで見逃されがちなのが、ISSBが示しているのは単に「どの産業分類システムを用いるべきか」という結論だけではない、という事実です。ISSBは、B62A項(商業銀行)およびB63A項(保険)において、どのような目的意識の下で、どの判断基準を用い、どの順序で結論に至るべきかという判断構造そのものを明示しているのです。

したがって、SSBJがISSBとの整合性を確保しようとするのであれば、IFRS S2号の改正文言を逐語的に反映することよりも、ISSBが前提としている判断構造がSSBJ公開草案の規定からも読み取れ、その結果として同等の情報開示に帰結する設計になっているかどうかが、本質的な検討対象となります。この観点から、産業分類システムの選択に関するSSBJ公開草案の書きぶりが、ISSBの判断構造を十分に可視化しているかどうかが、整合性評価の中核的な論点となるのです。

 

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