新型コロナウイルスがビジネスに影響を与えていく中で、上場企業はそのことを財務報告で言及せざるを得ないこともあるでしょう。ブログ記事「新型コロナウイルスの記述情報の海外事例」でも、その点をお話ししたとおり。
で、調べてみると、イギリスのFRC(財務報告評議会)は2020年2月17日の時点で、コロナウイルスの出現と拡散から生じるリスク開示に関する企業向けガイダンスを公表していました。スライド1枚に文章を記載した簡易なものではあるものの、なかなか仕事が早い。
それは、「FRC advice to companies & auditors on Coronavirus risk disclosures」(仮訳:コロナウイルスのリスク開示について企業と監査人に向けたFRCのアドバイス)。冒頭には、ビジネスが中国に関係している企業は特に関連すると言いながらも、コロナウイルスが中国以外に広がるなら、他の企業も影響を受けると記載しています。この冷静な予見もすごい。
このガイダンスで財務報告に役立つポイントは、ずばり、ここ。
Companies should consider whether to refer to the possible impact of COVID-19 on their business in their reporting of principal risks and uncertainties. Where mitigating actions can be taken, these should also be reported alongside the description of the risk itself.
これに対するボクの仮訳は、次のとおり。
「企業は、重要なリスクと不確実性を報告するにあたって、COVID-19がビジネスに与える可能性のある影響に言及するかどうかを検討する必要がある。緩和策を講じることができる場合は、リスク自体の説明とともにこれらも報告する必要がある。」
このように、リスクや不確実性、ビジネスに与える影響が挙げられています。日本の有価証券報告書でいうところの「事業等のリスク」と、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(MD&A)の箇所。これらの記述情報にいかに新型コロナウイルスの影響を書き込むかがポイントになってきます。
気をつけたいのは、MD&Aのところで、散々、新型コロナウイルスの影響を受けたと記載していながら、リスク情報でコロナウイルスに言及していないケース。各種の記述情報の内容が整合していない状態では、どちらかの更新漏れとみなされてしまいます。
では、これらの記述情報をどう書いていくか。これについては、海外企業の開示で良い事例あります。先日のブログでも、2020年3月7日のメルマガで海外事例の仮訳を紹介すると告知していたとおり。
まずは、日本の有価証券報告書で「事業等のリスク」に該当するところの記述をご覧ください。
↓↓↓
アイテム1A リスク要因
(仮訳は、メルマガに登録されている方にご案内しています)
次は、日本の有価証券報告書で「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に該当するところの記述をご覧ください。
↓↓↓
報告された結果に影響を与える項目および/または将来の結果に影響を与えると予想される項目
コロナウイルスの発生の影響
(仮訳は、メルマガに登録されている方にご案内しています)
以上となります。いかがでしたでしょうか。
財務報告に少しでもお役に立てたのなら嬉しい限りです。